内閣官房 国民保護ポータルサイト English サイトマップ 携帯サイト 印刷用PDF
ホーム   国民保護とは   有事関連法制について   武力攻撃やテロなどから身を守るために(パンフレット)   リンク

ホーム > 国民保護研修会in山形 > 議事要旨


  「国民保護研修会in山形」(議事要旨)


 1. 日時 2012年11月9日(金) 18:00〜19:40
   
 2. 場所 山形市生涯学習センター「遊学館」(山形県 山形市)
   
 3. 主催 内閣官房/山形県/山形市
   
 4. 登壇者 【主催者あいさつ】    
    橋 節 山形県副知事
    市川 昭男 山形市長
   
  【パネルディスカッション】    
    伊関 憲 山形大学医学部附属病院 救急部副部長
    杉浦 美香 産経新聞社 山形支局長
    市橋 保彦 内閣官房 内閣審議官
    森谷 俊雄 山形県 危機管理監
   
  コーディネーター 奥村 徹 内閣官房 NBC災害対策専門官




 ●橋 節 山形県副知事 主催者あいさつ
 
 「国民保護」という言葉について色々と思い出してみますと、平成7年の地下鉄サリン事件当時、本当に大変な事態が起こり、心が震えるような思いで映像を見ておりました。
 また、平成13年のニューヨーク同時多発テロの際には知事と議長が2日前に貿易センタービルを訪れており、帰国の途についているという報を聞いて胸をなでおろした思いが蘇ってきます。
 山形県では平成16年に国民保護法が成立してから、様々な計画及びマニュアル作りを進めてまいりました。
 また、県庁の中では図上訓練に取り組んでいましたが、この訓練だけで、実際に発生した場合に動けるのであろうかという思いでいました。
 そんなおり、内閣官房から、山形県で実動訓練をやってみませんかというお話をいただき、是非お願いしたいとお受けしました。
 今月20日に山形駅を舞台に化学剤サリンの散布事案が発生したとの想定で訓練を実施します。
 本日は実動訓練に先立ち、ディスカッションを実施するということで、国民保護にかかわる関係機関や県、国などの動きをシンポジストのご意見を聞きながら学んでいただきたいと思います。
 どうぞ今日一日、国民保護をしっかり考える日にしていただければありがたいと思います。


橋 節
 ●市川 昭男 山形市長 主催者あいさつ
 
 私も含め、「国民保護」と聞いても、なかなかピンと来ないのが実態ではないかと思います。
 国民保護法が施行されてから、山形市でも国民保護協議会という関係機関から成りたつ組織を立ち上げております。
 山形市もこれまでに図上訓練を2回行っていますが、実際の山形駅を使用した、国、県、市そして関係機関が入った訓練は初めてでございます。
 空港での保安検査の厳重さや原子力発電所における警戒の状況などを思い起こすと、訓練などで想定していたことが現実に起こる可能性があるなという実感がわいてくるのではないでしょうか。
 この研修会、そして訓練を通して、万が一の場合に我々がとるべき行動というものを身に付けていただければ山形市長としても大変うれしく思っております。


市川 昭男
 ●パネルディスカッション
   テロから身を守るために 〜地域社会における危機管理(日頃の備え)〜

  • 奥村 パネルディスカッションの導入として、皆さんにテロの様子をまず知っていただきたい。

  • テロに備えるためには、まずテロの姿を知る

    奥村 徹 氏
  • 奥村 まずは、パネルディスカッションの前にいろいろなテロのイメージを持っていただくため、いくつかの映像をご覧いただく。
     日本におけるテロ事案としては、1974年、三菱重工爆破事件があった。
     幸いにしてその後、治安当局等関係機関の努力により、こういう事件は未然に防がれている。その反面、市民の中でも危機感が薄れているという部分もある。
     2つ目に紹介するのは、2007年の西武鉄道爆破計画である。これはロンドンの自爆テロで使われたものがTATPだというのを犯人が知り、薬局で原料の調達を図り、爆弾の製造まで成功している。幸い、薬局からの通報により未然に防がれたという事例である。
     3つ目の事例としてスリランカでの爆破テロを紹介する。
     このテロは、スリランカの女性首相を狙ったテロである。映像を見る限り、それほどの爆発ではないのではないかと思われるかもしれないが、女性首相は失明し、20名以上の方が亡くなっている。
     このビデオを撮っていたクルーが一命を取り留めた後、日本医科大の救急センターにおいて爆弾の破片の摘出手術を受けた。この映像は、クルーからテロの現場でどういうことが起きているのか知ってもらいたいというメッセージを受けた日本医科大の先生から貸していただいた。
     自然災害はイメージしやすいが、テロのイメージはなかなか難しい。皆さんも、海外旅行先で爆弾テロに遭遇するということもあり得る。医療従事者として、あるいは市民として何ができるのかを考えていく必要がある。
     4つ目の事例としてマドリッドの列車爆破テロを紹介する。
     これは監視カメラがとらえた映像である。このテロでは200名近くの方が亡くなった。
     この映像は、まだ警察消防の方が来ていないフェーズ0の段階である。この段階においては市民同士の声の掛け合い、助け合いがなされていることが分かる。このような状況で自分たちは何ができるのかということも考えておく必要がある。
     このような事案は決して他人事ではなく、日本国内においても、アルカイダ関係者が日本に潜入して半年ほど生活していたということもあった。
     また、爆弾といっても様々なものがあり、靴爆弾と呼ばれる小さなものでも大きな爆発力を持っている。
     5つ目の事例として、1995年のオクラホマの連邦政府ビル爆破事件を紹介する。
     これはビルの前に止められたトラックが爆発することによって、御覧のようにビルの大部分がそぎ落とされてしまうような被害が出た。実はこの中に託児所があり、多くの子供も命を失ったという悲しいテロの現実を見せつけられる。
     6つ目の事例として、地下鉄サリン事件の映像を紹介する。
     これは当時、聖路加国際病院の救急部に勤務していた際にたまたま撮れた光景である。
     地下鉄の構内で心臓が止まる人、呼吸が止まる人を含め、多くの被災者が出たが、一体何が起きているのかわからない状況で対応しなければならないという事態になった。
     このように、当初は事件なのか、事故なのか全くわからない状況から、救命・救助をしなければならないのが現実である。
     今回行われる山形での国民保護訓練においても、原因物質はサリンという想定で進めていく。その中で如何に、地下鉄サリン事件での経験や教訓を活かしてそれを無駄にせず対応できるようになれるかということを私自身も考えている。
     まずは導入として、テロとはどういうものなのかということをイメージしていただけたのではないか。
     続いて、内閣官房市橋審議官から国としてのテロ対応についてお話しいただきたい。


  • 政府における国民保護に対する取組みについて

    市橋 保彦氏
  • 市橋  私からは、国民保護の仕組みと政府としての取組みについて、お話しさせていただきたい。
     まず、国民保護という言葉は一般的な用語とは若干違っており、万が一、外国からの武力攻撃あるいは大規模テロがあった場合に、国、地方公共団体、関係機関が協力して住民を守るという仕組みであり、自然災害や事故対応と比べ、何から国民を守るのかというところで異なる。
     具体的には、住民の避難、避難者への救援、また、被害を最小化するための警察、消防、自衛隊等の取組みであるが、国民保護が自然災害と大きく異なる点は、犯行グループや敵に対する対処と、住民の方々を守るという2つの対処を同時並行的に行うことである。
     国民保護の対象となる事態の一つ目は、武力攻撃事態であり、着上陸侵攻、弾道ミサイル攻撃等が挙げられる。
     二つ目は緊急対処事態であり、これは武力攻撃に準ずるような大規模なテロのことであり、例として原子力発電所の破壊、ターミナル駅の爆破、サリンの大量散布等が挙げられる。
     政府としてはこれらの事態に該当することを閣議で認定し、これにより国民保護法に基づく国民保護の仕組みが動き出す流れになっている。
     国民保護の仕組みが動き出すと、国、都道府県、市町村それぞれが対策本部を設置し、連携を取りながら対処していくことになる。
     国から「指示」が出されることになっているのが、国民保護対応の特徴である。
     まずは、国は事態の現状や今後の予測、住民の皆様に知らせるべき内容等を警報として発令する。都道府県知事を通じ市町村長から住民に対して、防災行政無線やサイレン等を用いながら迅速に伝達する。
     具体的な避難にあたっては、国から要避難地域や避難先を含めた避難措置の指示が出される。更に、県からは主要な避難経路や交通手段を示した上で、市町村を通じて住民の皆様に避難の指示が出される。市町村長は警察や消防と連携して住民の避難誘導を行う。
     避難の形態としては要避難地域の外への域外避難と屋内避難がある。
     テロ等の実行犯が活動中の危険な状態の中で、住民の皆様を安全に避難させるため、国からの指示に従って、県レベル、市町村レベルで関係機関と連携を取って対処を行う。
     もちろん、国の指示が無ければ何もできないというのではなく、緊急の場合には市町村長が自らの判断で避難を指示する権限がある。これを退避の指示と言っている。
     次に、救援とは、収容施設の設置、食料等の提供、医療の提供などである。これは市町村の補助により、都道府県が行うことになっている。救援についても国が指示を出すこととなっているが、緊急時には都道府県が実施することになっている。
     武力攻撃災害への対処については、国、県、警察、消防、自衛隊等の関係機関が連携をとりながら対処していくこととなる。
     こうした連携がしっかりと行われるように、国民保護法が成立した翌年の平成17年から、国と地方公共団体が共同して訓練を行う国民保護共同訓練を実施してきた。
     訓練は今年で8年目であり、47都道府県で少なくとも1回は共同訓練を実施している。
     山形県では、これまでに2回の図上訓練を行い、3回目の今回は実動訓練という形で実施する。
     これまでの訓練の成果としては、関係機関において国民保護の仕組みの理解が進んだ、危機管理意識が醸成された、対処要領や計画等を訓練によって検証改善できた、情報共有や活動調整の練度が向上し、関係機関相互の顔の見える関係の構築が図られた等が挙げられる。
     これらの成果は自然災害への対応にも活かされるものである。
     今月の20日には、山形駅のホームでサリンが散布され、多数の利用者が被災し、更に霞城セントラルの爆破予告がなされるという想定で実動訓練が実施される。
     実際に鉄道のホームを使って行う国民保護実動訓練というのは全国で初めてである。県、市、関係機関等が十分に連携しながら、意義のある訓練にしていきたいと考えている。
     最後に、国民保護ポータルサイトをご紹介したい。
     ここには、国民保護の制度の仕組み、あるいは武力攻撃やテロなどから身を守るにはどうしたらいいのかなどの情報、警報伝達時のサイレン、過去の国民保護訓練の映像などが掲載されている。是非、ご覧いただきたい。


  • 奥村 次に、山形県の森谷危機管理監から山形県の安心・安全に向けての取組みをご紹介いただきたい。


  • 山形県における安心・安全への取組みについて

    森谷 俊雄
  • 森谷  まず、山形県の危機管理を考える上で、地形的特徴をおさらいしたい。
     山形県は鳥海山を中心とする山地に囲まれており、宮城県とは奥羽山脈、福島県とは吾妻連峰、新潟県とは飯豊朝日連峰という形で接している。海岸線を除いては全て山で囲まれている。
     そのような中で、山を除けば安全な地域だというように実感している方も多いと思うが、一方で、広域的避難を要する大規模災害や危機に及んだ場合は、避難路や交通手段が非常に限られてくるなど、様々な災害に対する備えを十分にしなければいけない地域である。
     東日本大震災において、幸いなことに山形県は大きな物的被害は免れたが、福島県及び宮城県から非常に多くの方が避難をされた。
     今回は道路や空港が無事であったが、使用ができない場合に備えなければならない。
     山形県の危機管理体制であるが、知事をトップに危機管理・くらし安心局という組織が設置されている。その中の危機管理課が国民保護や消防防災関係を担っている。復興支援室は東日本大震災の復興支援を担っている。くらし安心課は、交通の安全、消費者行政といった消費を中心とした対応を行っている。食品安全衛生課は、食に対する安全・安心の確保を担っている。
     山形県の危機管理部門は日常生活の安全・安心から国民保護まで一元的に所管する組織となっており、この点は全国的にも珍しい。
     緊急事態発生時には、知事をトップに本部体制をとるが、危機管理・くらし安心局はその事務の総括または関係部局、関係機関との相互調整を行うセクションとして機能する。
     平常時は、各部局の次長級職員を危機管理員として指定し、副知事をトップとする危機管理調整会議を設置している。会議では全庁的な危機管理施策の推進、危機管理体制の整備、各部局間の連携事項などについて協議している。
     県庁では、災害や緊急事態が起きた場合に備え、職員2名体制で夜間・土日を含め対応している。
     装備としては、消防防災ヘリコプター「もがみ」を山形空港に配備しており、県警察のヘリコプターとも連携しながら、林野火災での消火活動、山岳事故での救助活動、救急活動、災害時の応急対策活動を行っている。
     また、広域航空消防防災応援活動ということで近隣の県に何かあったときは相互に応援する体制ができている。
     11月15日から山形県立中央病院に配備したドクターヘリが就航する。
     専門の医師と看護師が同乗し、迅速な医療救護活動に対応することになっており、県内をほぼ30分でカバーできるようになる。
     最近の危機管理・くらし安心局の活動としては、4月に爆弾低気圧により県内でも大きな被害があった際の対応や、北朝鮮による「人工衛星」と称するミサイル発射時の国との連絡や住民への伝達に当たっている。
     訓練としては、年度の初めに抜き打ちで緊急登庁訓練を行ったり、災害対策本部の設置訓練などに取り組んでいる。
     また、国民保護の図上訓練、地震などを想定した実動での防災訓練に取り組んでいる。
     東日本大震災で、共助「絆」ということがクローズアップされたが、県でも自主防災組織の組織率を挙げようと様々な取組みをしている。
     東日本大震災や阪神淡路大震災においても、身近な人と一緒に逃げる、あるいは身近な人に瓦礫から助け出されることで救われた命が多かったと聞いている。
     身近なところから、県民一人ひとりが協力しながら身を守る、助け合う。そのための準備や訓練が非常に大事であると考えている。
     市町村と一緒に、県民の方々の安全・安心に関わる意識向上に努めていきたい。


  • 奥村 続いて、山形大学医学部附属病院に所属され、中毒学の専門家である伊関救急部副部長から、化学災害及び化学テロへの備え方について、お話しいただきたい。


  • 化学災害・化学テロに備える

    伊関 憲
  • 伊関  化学テロという言い方をすると思い浮かべるのは平成7年3月の地下鉄サリン事件だと思われる。一方で化学災害は身の回りで起きている。
     最近では、本年9月に日本触媒姫路製造所で火災が発生し、救急隊員1名が亡くなった。
     化学災害の定義とは、化学物質が環境中に放出されることにより発生する健康被害である。
     また、化学テロとは、社会の混乱を招くために化学物質を使って引き起こされた化学災害である。
     化学災害は日本で年間400〜600件起こっていると言われている。
     化学災害が増えている要因は、住宅街の近くに工場があるため、すぐに影響が住宅街まで及ぶこと。大量高速輸送がなされていること。地下空間が多いこと。加えて、身近に化学物質が増えてきているというのが、要因として挙げられる。
     テロは、心理的な効果を期待しており、パニックに持ち込むことが大きな目的である。
     テロに使用される兵器には大きく分けて、生物兵器と化学兵器がある。
     生物兵器で使われるのは天然痘などのウイルス、炭疽菌やボツリヌス菌等の細菌などである。これらは、製造が容易であり、殺傷力が高いものを安く作れるというのが特長である。
     また、化学兵器では、神経ガスとして、サリン、ソマン、タブン、VXガスなど。窒息性ガスとして青酸ガス、ホスゲンなどが挙げられる。
     これらの剤は、検知、同定が困難であり、また、防護手段が限定されており、これが生物・化学テロの特徴である。
     身の回りにあるものでも、社会の対応能力、ある程度の対応能力を超えていくと、化学災害となる。
     化学災害と化学テロの両方で特徴的なのは、最初に目に影響が出るということである。
     水に溶けやすい化学物質の場合、身体の一番表面に水があるのが目であるので、影響も一番初めに出る。水溶性の低いものは、吸入され、肺胞レベルの障害を起こして呼吸困難を起こす。
     さらに、神経ガスでは、縮瞳が起こる。写真はソマンを使った時の兵士の縮瞳の目であるが、瞳孔が小さくなっているのが見て取れる。
     窒息性のガスであれば、呼吸ができなくなり、チアノーゼ、低酸素症になってしまう。
     このように、目と呼吸に影響が出ることを覚えておいていただきたい。
     化学災害や化学テロから自分の身を守るためには、検知、防護、救助・医療の3段階が重要である。
     検知は、警察、消防、自衛隊等の機関が機材を保有しているが、非常に高価であり、一般の方が個人で購入することはあまり考えにくい。また、防護についても、個人用防護服があるが、これも個人で購入することは考えにくい。
     残りの救助・医療でいかに手助けしていくかが大切である。
     救助・医療の一つに除染がある。ひとつは呼吸の除染。発生場所から離れることにより曝露量が少なくなる。
     次に体表の除染。洋服に加え、宝石や靴なども忘れず除去して袋に入れる。これだけで約70%のものが除去できると言われている。
     さらに、コンタクト、メガネは外して大量の水で目を洗う。また、シャワーを浴びて石鹸で洗い流すのも有効とされている。
     最後に、化学テロではパニックを起こすことが目的なので、パニックにならず冷静に判断することが必要である。
     「天災は忘れた頃にやってくる」、そして同じ災害が繰り返されていくのだということを、いつでも念頭に置いていただけたらと思う。


  • 奥村 それでは、産経新聞の杉浦支局長にテロに関する情報の取扱いについてお話しいただきたい。


  • テロに関する情報の取扱い

    杉浦 美香
  • 杉浦  バイオテロのことについて、自分自身の経験も交えてお話しする。
     2009年に新型インフルエンザが世界的に流行したが、その時にバイオテロと共通点があるということを感じた。共通点とは、潜伏期間があり、その間に、接触感染、空気感染などで気づかないうちに広がってしまうということである。
     新型インフルエンザは、メキシコで豚インフルエンザが流行っているという情報から始まり、ついには日本にも上陸し、空港などでの調査により、横浜の男子高校生が国内感染を初めて疑われた。
     後に、その男子高校生は、新型インフルエンザに罹患していないことが判明したが、当時メディアは、高校生の居場所を調べ上げ、取材に行った。
     個人名をどこまで出すかというのは、行政も非常に悩ましいと思うが、個人名を直接出さずとも、メディアが行くことによってわかってしまう。
     バイオテロや新型インフルエンザにおいて、拡大防止を考えた場合、どこまで個人名を出していけるのかということについては、非常に難しいところである。
     メディアも、どのように報道してよいのか悩む。当時、厚生労働省からの発表では新型インフルエンザが発生した学校の名前は伏せてあったが、余計な混乱を招いてパニックにならないよう、学校名を出して報道するという判断に至った。
     メディアの報道というのは、テロに利用される可能性が非常に強い。テロリストであれば、視聴率の高い時を狙い、メディアを利用して恐怖を煽ろうとするであろう。よって、メディアには、テロリストに荷担せぬよう、どのように自主規制するべきかという、自らの倫理観が問われている。
     4月に、北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射事案があったが、この時に産経新聞は急先鋒に立って、国の情報伝達が遅れたことを批判していた。
     日本の安全に影響を及ぼすものではないとの判断でJアラートを使わなかったということであるが、これに対して一般人もメディアも共通理解がなかったため、非常に遅れたという印象になった。
     また、福島原発事故におけるSPEEDIでの放射能の拡散状況の発表では、その発表が遅れたため、隠蔽したというイメージが強く認識されてしまい、信頼性を失うことに繋がった。
     不確実なデータをどのように捉えるかというのは、受け取り手の理解度も必要になってくる。
     官房長官が東日本大震災による福島原発事故後の会見でよく使っていたのが、「直ちに(人体に)影響を及ぼすものではない」という言葉である。これは「直ちに影響があるわけではないから将来も大丈夫だ」という意味にもとれるし、解釈の仕方によって「直ちに影響を及ぼすものではないけれども、将来についてはわからない」という意味にも捉えられる。曖昧な部分が入っており、非常にわかりにくかった。これは発表する側の反省すべき点である。
     情報の信頼性について、東日本大震災の際、メディアの調査では、8割から7割は信頼できないという調査結果になっていた。新聞、テレビ、政府がどう言おうとも、信頼している近所の人が「いや、実は違う」と言えば、そちらを信用してしまうこともある。よって、誰から発信されたかというのは非常に重要である。
     デマについても、関東大震災の時は、「社会主義者に率いられた朝鮮人が放火した」というような流言飛語で何人もの方が襲われてしまうというようなことが起きた。
     東日本大震災におけるコスモ石油の火災では、インターネット上に「有害物質が出る」という事実と違う情報が流布されていた。
     パニックを恐れて難しい表現や曖昧な表現をしてしまうと逆効果になってしまうことがある。
     受け手の方も、情報についてどのようなものかを理解し、正しく怖がるということが必要なのではないか。


  • 奥村 本日の研修会に参加された皆様方に、各パネリストから、これだけはというポイントをお示しいただきたい。

  • 市橋  テロというものを起こり得るリスクとして皆様に捉えていただきたい。遠い世界の国の話ではなく、山形でも起こり得るのだと考えて、それに対する備えをしていただきたい。
     テロを未然に防ぐためには、例えば駅で不審なものを見つけた場合に、駅員等に通報するなど、地域を皆の目で守るというような取組みをやっていただきたい。
     仮に起こってしまった場合の対応については、国民保護ポータルサイトに書いてあるので、ぜひ一度、この国民保護ポータルサイトをご覧いただければ大変ありがたい。

  • 森谷  テロや災害は、山形県でも必ず起こり得るという考えを常に持ってもらった上で、自分がそういう事態に遭遇したらどうするのだということを、日頃から考えていただきたい。
     そして家庭や学校、企業で色々な機会に話題にしていただけたらありがたい。さらに、そのような話し合いを、地域でも広げていただくと大変良い。
     自分の身の回りの出来事、身の回りの地域の人々の様子など、地域のことに関心を持っていただきたい。
     それが、地域が災害にもテロにも強くなる近道である。

  • 伊関  山形県には、様々な工業団地が存在し、化学災害が起こる可能性はいくらでもある。
     例えば先月、化学系の洗剤を入れたアルミ缶が、東京メトロ丸ノ内線の電車内で破裂する事件があった。あのレベルでも化学災害である。つまり、化学災害はいつでもどこでも起こり得る。
     そのような時には、皆が落ち着いて対処していただきたい。
     災害について色々な本が出ており、化学災害やテロの本も売っている。
     パニックになるために読むのではなく、自分に何かあった時どのような行動をとれば良いのだろうと思って、本を1冊でも読んでもらいたい。
     そしてそこに必ず書いてあることは、除染をするということ。自分でシャワーを浴びて服を取り替える。それだけでも防御できる。そして目を洗う。そのくらいのことでも、殆どのことがカバーできるようになる。
     皆さんが化学災害に遭遇した時のために、本を読み、冷静に行動できるようにしていっていただきたい。

  • 杉浦  たとえどこかでテロが起こったとしても、むやみに怖がってパニックになってしまっては被害を広げてしまう。正しく怖がるということを伝えたい。
     受け手側がどのように情報を受け止めるかということが、非常に重要となってくる。
     インターネットについては、東日本大震災の際、市民がツィッタ―などを通じ発信者になって、色々な救援情報を出し、それにより消防、警察、メディアが動くというようなことがあった。
     メディアが情報発信者として大きな権力を持っているというような時代から、市民が発信者にもなる時代になっている。そういう市民が、高い意識を持てば、テロがたとえ起きたとしても、パニックになることは非常に少なくなるのではないかと思っている。

  • 奥村  本日様々な視点からご示唆をいただいた。
     東日本大震災の時にも、想像を超える大きな津波に襲われたわけだが、想像を超えるという部分では、化学テロというのも、普段の感覚からは想像を超えることかもしれない。
     今回の研修会を一つの考える機会にしていただければと思っている。
     ご清聴ありがとうございました。


  • このページの先頭へ

    内閣官房副長官補(事態対処・危機管理担当)付
    〒100-0014 東京都千代田区永田町2-4-12 TEL.03-5253-2111(代表)
    お問い合わせ  プライバシーポリシー について  リンク・著作権について