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「国民保護研修会in長崎」(議事要旨)


 
 1. 日時    2011年12月16日(金) 18:00〜19:45
   
 2. 場所   シーハットおおむら さくらホール (長崎県 大村市)
   
 3. 主催   内閣官房/長崎県/大村市
   
 4. 登壇者     【主催者あいさつ】            
            田中 桂之助     長崎県副知事
            松本 崇     大村市長
   
    【基調講演】        
        奥村 徹  内閣官房NBC災害対策専門官
   
    【パネルディスカッション】        
    パネリスト   奥村 順子   長崎大学熱帯医学研究所 准教授
        山 隼人   長崎医療センター 救命救急センター長
        日 誠一郎   長崎空港ビルディング(株) 代表取締役社長
        市橋 保彦   内閣官房 内閣審議官
        坂谷 朝男   長崎県 危機管理監
   
    コーディネーター   奥村 徹    




 ●田中 桂之助 長崎県副知事 主催者あいさつ
    田中 桂之助氏  平成16年6月に国民保護法が制定されました。その後、政府、地方自治体がともに国民保護に関する基本的な指針、計画及びマニュアルを策定し、また訓練の実施などを通じて、万一の有事に対する備えの充実が図られてきました。このような取り組みの中、平成24年1月29日に長崎空港を舞台とした長崎県で初の国民保護共同実動訓練が行われます。全国的にも空港を想定した訓練は初めてであり、関係機関の連携を踏まえた危機管理能力の向上を目指すととともに、住民の皆様にも危機管理に対する理解を深めていただければと思います。本日は、その共同実動訓練に先駆けて実施する研修会です。本研修会を通じて有事への対応及び危機管理についてさらに理解を深めていただき、有意義な研修会となることを期待しております。本日は、どうぞよろしくお願い申し上げます。


 ●松本 崇 大村市市長 主催者あいさつ
    松本 崇氏 大村市では国民保護法の施行に基づき、平成19年に大村市国民保護計画を策定しております。平成24年1月29日に予定している訓練を通じて、初動対処能力の向上及び関係機関との連携強化を図りたいと考えております。テロ、武力攻撃は決して起こってはならないことでありますが、いつ起こるか分からないものでもあります。そのため、いわゆる危機管理が極めて重要になると思われます。1月29日の訓練に先立ち、関係機関、市民及び県民の皆様方に、国民保護計画をご理解いただくために本日の研修会を実施することになりました。基調講演及びパネルディスカッションをしっかりとお聞きいただき、皆様にとって本研修会が充実したものとなるよう願っております。本日の研修会が有意義となるよう、また来年1月29日に実施予定の国民保護共同実動訓練の成功を心から祈念しております。


 ●基調講演
  
 さまざまなテロにどう立ち向かうか

                         内閣官房NBC災害対策専門官 奥村 徹
    奥村 徹氏  現在考えられているテロの特徴として、CBRNE(シーバーン)と呼ばれるものがある。CBRNEとは、「Chemical(ケミカル:化学兵器)」、「Biological(バイオロジカル:生物兵器)」、「Radioactive(レディオアクティブ:放射性物質)」、「Nuclear(ニュークリア:核爆発)」、「Explosive(エクスプロシヴ:爆発物)」のことである。また、CBRNEだけでなく、無予告での突然の攻撃、同時多発、無差別、大量殺りくなど、テロの国際化や過激化なども現代テロの特徴である。

     世界的に見て最も頻度が高いテロは爆弾テロであるが、日本では1974年の三菱重工爆破事件以来、大きな爆弾テロは発生していない。その一方で、化学兵器や放射性物質あるいは生物剤を使ったテロなどがあり、日本では化学テロの松本サリン事件、東京地下鉄サリン事件が有名である。また、東日本大震災における福島原子力発電所事故、広島県及び長崎県の原爆において日本人は核の被害に遭っており、NBC全ての災害もしくは被害に関わっている国は世界中で日本のみである。そのような意味で、日本の対応は世界で注目されている。

     内閣官房では国民保護ポータルサイトを開設しており、このポータルサイトでは、国民保護や国民保護の仕組み、武力攻撃事態及び緊急対処事態などについて、詳しく解説している。本日は、この緊急事態にあたる様々なテロについてご紹介したい。


    様々なかたちのテロからテロへの対応を学ぶ

     日本の爆弾テロで忘れてはならないのが、1974年の三菱重工爆破事件である。これは三菱重工ビルが爆破され、窓ガラスが飛散し、空から降ってくるガラスの破片で、昼時のサラリーマンやOLら8名が死亡、385名が重軽傷を負ったという痛ましい事件である。当時、この他にも大企業を中心に様々な爆弾テロが起きたが、警察の方などの継続的な努力により、日本では大きな爆弾テロは未遂の段階で阻止されている。世界では、記憶に新しいところでロンドン同時多発テロ事件が発生している。

     次に、スリランカの女性首相を狙った爆弾テロの映像を見ていただきたい。爆発自体は大したことはないと思われるかもしれないが、この瞬間に多くの方が亡くなっている。本来は政治家を対象としたテロであったが、無差別に周りの人も傷つけてしまっている。これがテロの特徴である。このような事態がいつ、どこで起きても不思議はないのである。未然にテロをどう防ぐか、万一発生した場合はいかに多くの命を救うかが重要なことである。

     最近日本で計画された爆弾テロとして、TATPと呼ばれる爆弾を用いた西武鉄道爆破計画があった。これはアルカイダ組織による爆破計画であったが、その容疑者は日本に住んでいたという事実もわかっている。このように隣にテロリストが住んでいても不思議はないとの緊張感を持っていただくことも必要なのではないかと考える。日本はこれまで安全な国と言われてきたが、このように国際的なテロの危険にさらされているのである。

     さらに、爆弾の中に放射性物質を混ぜるとダーティボムになる。例えば、セシウム137を拡散させることにより、社会を混乱させるテロも想定されている。放射性物質は、医療用、工業用など容易に入手が可能なものもあり、食物あるいは水の汚染などは、社会の混乱や心理的影響も大きい。そのような中で、米国では市民に向けて以下に示すダーティボム対応のポイントを示している。

     ① パニックに陥らない
     ② 事件現場の持ち物を取りに戻らない
     ③ 体表面についた放射性物質をシャワーで落とす
     ④ 現場近くで飲食しない
     ⑤ ヨウ素剤を探して時間を浪費しない
     ⑥ 病院に殺到しない
     ⑦ 正確な情報を集める

     ダーティボムによるテロ発生時には、行政、国、県から適切な情報を提供し、相談窓口を設置する体制も整うため、心配という気持ちだけで病院に殺到して病院の機能を停止させてしまうのではなく、このような相談窓口などを利用いただくことも一つの方法である。いずれにしても、行政の広報に耳を傾けていただくことが重要である。

     なお、ダーティボムによるRテロを想定した訓練は平成22年度の茨城県国民保護訓練で実施している。

     化学テロとして、世界中でNBCテロの警戒を始めたとされる目覚まし時計と言われた事件が「東京地下鉄サリン事件」である。1995年3月20日に発生した東京地下鉄サリン事件は、NBC兵器が大都市で使われ、13名が死亡、6,500名以上の被害者が出た事件である。当時、私は聖路加国際病院の救急部に勤務しており、負傷者の対応にあたった。事件当初は、爆発事件という情報だけであり、原因は不明で爆発ではあるが煙も火も見た人はいないという状況であった。聖路加病院では、陣頭指揮を執った日野原先生の指示のもと、まだ麻酔のかかっていない患者の方の手術及び一般外来診療を中止し、被災者の方の受け入れを行った。爆発の原因が不明の中、防護服などの準備もなく、医療従事者からも二次被害が出ている。

     また、トリアージは阪神・淡路大震災以降に取り入れられた考えであり、東京地下鉄サリン事件は阪神・淡路大震災発生から数か月後の状況であったため、当時はトリアージという考えも浸透していなかった。そのため、被害者の方の命を救うための効果的な搬送が適切に行われなかった部分もあったと思われる。例えば、救急車の搬送先を割り振る東京消防庁災害救急情報センターでは、大混乱となり搬送先の病院を見つけることができず、隊長自ら公衆電話に走り、病院に対して直接交渉を行ったとの話もある。

     また、消防、自衛隊の方はHAZMATと呼ばれる危険物管理の考え方のノウハウは持っていたが、医療機関では毒ガスマスクや防護服の準備が全くない状況であった。さらにトリアージタグは、現在では黒、赤、黄、緑となっているが、当時はタグごとにバラバラで統一化されていなかった。東京地下鉄サリン事件の後、危険物管理やトリアージなどの概念がしっかりと構築されていくことになる。

     化学テロについてご紹介してきたが、次にバイオテロについてご紹介する。バイオテロは、これまで日本では未遂事件となっているが何度も発生している事件であり、米国では炭疽菌による実際のテロが発生している。バイオテロには大きく「顕性テロ」「非顕性テロ」の2種類があり、顕性テロはテロを高らかに宣言し実行するテロである。一方、非顕性テロは、例えば人知れず病原体を散布し、知らぬ間に病気が流行するような形のテロのことである。米国疾病予防局では感染症をカテゴリ分類しており、国家安全保障上大きなインパクトを与えるカテゴリAには、天然痘、炭疽菌などが含まれている。バイオテロではこのような自然発生的な伝染病とは明らかに異なる病気の形、例えば、動物、昆虫、魚などの異常な大量死もバイオテロを疑う状況の1つである。市民の皆様にはこのような社会の変化があった場合に、そのまま放置するのではなく、行政への届け出、警察への連絡を行っていただきたい。また、本来起こるはずのない場所での病気の発生、病気発生率の急上昇、風向きに沿って被害が発生しているような場合など、様々な異常事態が発生した場合に、いかにバイオテロを早くから疑うことができるかという部分が重要なポイントの1つとなる。

     テロはいかに早く対策を取るかが重要となるが、ここで感染症の早期探知を迅速に行うことを目的とした「症候群サーベイランス」の例を紹介させていただく。例えば、薬局で解熱鎮痛剤が普段より売れ出した場合、発熱する病気にり患した方が増加しているのではないかといった疑いを持つことができる。このように、最近では異常な病気の流行を早期に探知する方法も用いられている。

    テロに対応するためのポイント

     明石花火大会歩道橋事故や大洋デパート火災などパニックが発生してしまったために被害が拡大したということはあるが、実災害発生時においてパニックの発生はほとんど例外的であると言われている。例えば、突然の危機に対する人間の心理はまず否認から入る。「火事だ」と聞こえた場合、「本当に火事なのか。」「誰かがふざけているのではないか。」「においもなく、火事の様子はないが。」というような形で、今起きている危機は本当なのかと疑う段階がある。これは最近では、正常化バイアスと呼ばれており、津波の警報が出ていても家の中で待機しているなど様々な場面でみられる。9.11のツインタワーの崩落のような大きな事件の場合でも航空機が衝突したにも関わらず、嘘ではないかという否定の段階が存在する。否定の段階後、怒りや抑うつ的な状態となり、最終的に受容という形になる。いずれの場合でも、このような人間の心理において、いかに早く事実を認識し、きちんと危機に対応できるかという部分が重要となる。

     それでは最後に「テロの真実の姿」についてお伝えしたいと思う。

     ① 突発した大災害時、テロ時に最も初動の救助、救出に効果が上がるグループは被災者自身である。

     マドリッドの列車爆弾テロ発生直後には、警察及び消防もきておらず、被災者同士が互い声を掛け合っている。これは福知山線脱線事故でも同様の市民の働きがある、様々な事故現場で最初に動くのは市民である。

     ② 大災害時やテロ時に病院に搬送される被災者のうち救急車で搬送される方はわずか。
     ③ 大災害時、テロ時には、被災地域のあらゆる病院ではなく、一部の病院に集中して被災者が搬送される。

     東京地下鉄サリン事件においても、都内には多くの病院があるが、被災者6,500名のうち1,300名が聖路加病院に搬送されている。このような不均衡は実災害時に起きてしまうことではあるが、一箇所に集中してしまうような不均衡を起こさずに搬送することは非常に重要である。

     ④ 爆弾テロ発生直後から患者は病院に搬送、来院する。

     9.11では、非常に早いところでは数分後から患者が来院した。テロ発生直後から患者は来院するが、約1時間のずれが生じていることも事実である。

     ⑤ 突発したテロ事件において、ほとんどの方は救急外来で処置後に帰宅する。

     東京地下鉄サリン事件においても87%の方が外来治療でそのまま帰宅している。つまり、それだけ軽症の方が多く含まれるということである。建物崩壊がある場合は、25%の方がお亡くなりになることも最近の研究で分かっている。

     ⑥ 爆弾テロでは、救急外来で死亡する方はほとんどいない。

     実際に全くないということはないが、4時間以上経った頃からお亡くなりになる方、つまり入院後に亡くなられる方が多い。

     ⑦ トリアージは相対的なものである。

     トリアージは相対的なものであり、その場の状況に応じて、変わるものである。

     大災害やテロに対して、あらかじめ抱いたイメージを持って対応することは大きな誤りを起こしかねない。常に様々な事件、事故、災害が起きた場合、他人事ではなく、他者の悲劇を自身のものとして捉え、自分自身、家族にできることから始め、地域の防災力を高めることが大切かということを強調させていただきたい。ご清聴ありがとうございました。




 ●パネルディスカッション
  
 災害そしてテロ 地域はどう備えるか ―長崎県訓練想定から―
  • 奥村(徹) 様々な分野における知見をお持ちのパネリストの方から「災害そしてテロ 地域はどう備えるか」に関してお話しいただきたい。まず初めに、内閣官房市橋審議官から国の取り組みについてお話しいただきたい。


  • 政府の国民保護に関する取り組みについて

  • 市橋 保彦氏市橋 国民保護とは、万一、外国からの武力攻撃や大規模テロがあった場合に、国、地方公共団体、警察、消防、自衛隊、医療機関などの関係機関が協力し、住民を守る仕組みのことである。具体的には、住民の迅速な避難、被災住民への救援、消防、警察、自衛隊などによる被害の最小化のための取り組みなどである。この国民保護の対象事案には、武力攻撃事態及び緊急対処事態の2つがある。武力攻撃事態とは外国からの武力攻撃が発生した事態のことであり、緊急対処事態とは武力攻撃に準ずる大規模テロ攻撃等が発生した事態のことである。事案が発生した場合、政府はこれらの事態に該当することを、閣議を経て認定し、認定後は国民保護の仕組みが機能することになる。具体的には、事態認定後、政府は事態の現状及び今後の予測等について警報を発令し、直ちに都道府県知事に通知する。この警報は都道府県知事を通じ市町村長に通知され、市町村長から住民に対して防災無線及びサイレン等を用いて迅速に伝達される。住民の避難が必要な場合は、国から県、市町村、住民の流れで避難指示がなされ、市町村長は消防及び警察などと連携して、住民の避難誘導を行う。テロなどの実行犯が活動している危険な状況下で住民の安全を確保しながらの避難となるため、国からの指示に従い、県及び市で関係機関などと十分調整を行ったうえでの実施となる。このように国民保護においては、県、市町村と国との連携が非常に重要となる。
     来年1月29日に実施予定の長崎県国民保護共同実動訓練は、関係者の皆様と十分連携しながら意義のあるものにしたいと考えている。よろしくお願いしたい。


  • 奥村(徹)  次に、長崎県の坂谷危機管理監に長崎県における国民保護への取り組みなどを中心にお話しいただきたい。


  • 長崎県の危機管理

  • 坂谷 朝男氏坂谷 長崎県は、東西213キロ、南北307キロの県域であり、海岸線の総延長距離は4,203キロで全国2位の長さである。このように、長崎県は海に接している部分が多く、人の移動や物資の輸送など交通手段に制約を受ける特徴を有している。その他、大雨集中豪雨及び火山噴火の発生や、韓国、北朝鮮、中国と海を隔てて最も近い県でもある。
     長崎県では、「長崎県危機管理対応指針」を策定しており、県民の生命、身体等に重大な災害が発生し、または発生する恐れがある場合、実効性のある各種対策が実施できるよう基本的な枠組みを定めている。危機管理とは、事件や事故を未然に防止するなどの事前対策、危機発生時における応急対策、発生した危機へ対処する事後対策、この3点を含めた総合的な取り組みのことである。長崎県の危機管理体制は、県知事のもとに危機管理監が設置されており、それに属する形で危機管理課及び消防保安室が設置される形となっている。また、防災航空センターにヘリコプターを1機配備し、災害や救急患者の搬送及び海難救助などにあたっている。さらに県庁内に24時間、365日体制の防災室を設置し、あらゆる危機に対応する体制を整えている。実際に人工衛星落下事案などの際には、防災室体制に危機管理課員2名を増員し、国との連絡対応及び情報収集にあたった。
     現在の危機管理上の懸念事項としては、武力攻撃事態はもちろんのこと、地震及び原子力災害があげられる。このような様々な脅威及び事態に備え、住民の皆様や地域に期待することは、共助という考え方(真っ先に助けることができるのは、自分自身や隣人の方たち)である。自分の命や自分たちの地域は自身で守るという気持ちを持ち、安全に対して積極的に一歩を踏み出していただきたい。


  • 奥村(徹)  続いて、国立病院機構長崎医療センターの山救命救急センター長に災害拠点病院の取り組みについて、お話しいただきたい。


  • 長崎県内の災害拠点病院はどう取り組んでいるか

  • 山 隼人氏 災害直後には、県民の方の自助及び共助が必要となる。また地域内の医療機関による取り組みが重要となる。地域内の拠点病院では、より多くの傷病者を治療するためにトリアージを行い、中等症、重症等の方の治療に携わる。あわせて、三次医療機関への搬送及び地域外からの災害派遣の医療チームであるDMATやドクターヘリによる医療支援を進めていく。長崎県では地域防災計画に基づき、平成19年3月に災害医療救護マニュアルを策定している。このマニュアルは、各医療機関、医師会及び看護協会が行うべき活動を定めており、自然災害、事故災害など、放射線、細菌、化学災害などにも対応可能な内容となっている。また、長崎県の災害医療体制は、基幹災害医療センターとして長崎医療センター及び長崎大学病院が定められており、地域の災害医療センターとして二次医療圏ごとに9病院が策定されている。
     医療活動は大きく「派遣」と「受入」に分けられ、具体的に「派遣」とは、ドクターヘリやDMAT、医療班としての活動があげられる。長崎DMATは平成20年3月に発足し、現在、拠点病院の9施設、拠点外施設の長崎労災病院及び長崎原爆病院を中心に徐々に体制を拡充している。
     実際に災害が発生した場合は、まずは災害現場の自助及び共助で人々が集まる。次に救急隊が現場に向かい、傷病者が多数の場合は、トリアージを行うことにより選別する。その後、救護所が設置され始め、徐々に医療体制が整い始める。現場に医療者、DMAT、ドクターヘリが向かうことにより、現場の活動が変化し、より多くの方を救うことが可能となる。ここで、より多くの命を救うための救護所における3つの医療活動ポイントを示す。
     ① 最も重症な方を優先して治療
     ② 現場では最終的な治療までできないため、生命を維持するための治療を行い、可能な限り早く医療機関に搬送する努力が必要
     ③ 一つの医療機関に偏らないよう、ヘリコプターなどを活用しながら広域に搬送し多くの命を救うことが重要
     より多く生命を守るために救急隊、医療従事者がJPTEC(病院前外傷教育プログラム)などを含めた知識及び技術を高めている。さらに消防、警察、医療チームの各組織がMCLS(多数傷病者への医療対応標準化トレーニングコース)を学ぶことにより、救命率や社会復帰の向上に努力している。


  • 奥村(徹) では、長崎大学の奥村准教授に国際的な視野に立った災害対応の視点で長崎大学の取り組みを中心にお話しいただきたい。


  • 国際的な視野に立った災害対応―長崎大学から世界へ―

  • 奥村 順子氏奥村(順) 感染症のボーダレス化は既に皆様が感じられていることだと思われるが、2010年には、1年間に約9億4千万人が海外に旅行しており、1秒間に30人が国境を越えて旅に出ている。つまり、感染症が発生した場所によらず、容易に世界中に拡散する可能性がある。しかしながら、バイオテロで使用される可能性が高いとされている天然痘ウイルス、エボラ、マールブルグ、マチョポ出血ウイルスなどによる1類感染症は、有効な治療法がなく、対応が困難である。
     長崎大学熱帯医学研究所では、様々な感染症及びそれに随伴する健康に関する諸問題を克服することを目的とし、関係機関と連携を図りながら、感染症対策に貢献している。例えば、2003年のSARS対策では、ウイルス学分野が迅速診断法を開発し、その活用により現場での対策が実施された。また、新興感染症分野は、バイオテロなどの現場での活躍が期待されるモバイル型多項目生体検知システムを東芝とともに開発し、警察関連機関等で使用されている。
     ここで、実際に感染者が出た場合の日本における医療施設についてふれたい。日本では、第1種感染症指定医療機関が、平成23年4月1日時点で全国に38施設74床設置されている。平成23年11月末に長崎大学病院にも同病床が新たに設置された。長崎県にはその他に、第2種感染症指定医療機関が13施設設置されており、緊急時にはこれらの機関の連携が必要となる。
     また長崎大学は、原爆、被爆医療に対しても貢献しており、高度の先端医療を推進するとともに、国内外の放射線被爆者に対する国際貢献として人材育成及び医療支援を行っている。福島県でも長崎大学教授が管理アドバイザーとして活動している。
     最後に感染症にはもう国境がないことをしっかりと皆様にご理解いただき、私の講演を終えさせていただきたい。


  • 奥村(徹) 次には、長崎空港ビルディングの日社長に長崎空港における日頃の防災あるいはテロ対応についてお話しいただきたい。


  • 空港におけるテロ・防災対策

  • 日 誠一郎氏 空港における飛行機の安全運航を阻害するような行為あるいは、災害に備える体制についてお話しする。
     第一には、安全の確保及び利用いただく皆様に安心を提供することが重要だと考える。また災害対処として、災害発生時には、いち早くその機能を回復する公共の輸送機関としての役割を果たす必要があると認識している。さらに安全対策として、国際的な基準に基づき、国土交通省などの監督官庁及び警察などの指導のもと、航空会社及び空港ビルが連携し、テロに対する対策を取っている。施設内の不審物及び不審者については、警備員によるパトロールだけでなく、空港ビル従事者全員が危機意識を持ち監視を行っている。
     また、アクセスの問題から現在は広域避難所となっていないが、長崎空港ビルディングは、耐震性の補強、電源の確保、飲食物の一定量の備蓄により、一時避難場所としての備えがある。さらに、緊急時に各役割が有効に機能するよう、ハイジャック対応訓練、救急救命訓練など様々な訓練を空港全体で定期的に実施している。
     一方で、航空会社の危機管理には、「自然災害などの外部的な環境・要素に起因するもの」、「システムダウンなどの社内の不祥事・不具合」、「航空機事故・ハイジャック・重大インシデント」の3つの視点がある。緊急時には危機対応本部(CMC)が設置され対策にあたる。また、5段階の危機対応レベルを設定することにより迅速な対応を図ることができる仕組みを整えている。
     最後に緊急時に重要と思われる4つのポイントについてお伝えする。
     ① 危機意識と訓練の実施
     ② 正確かつタイムリーな情報の入手
     ③ 初動の重要性の意識
     ④ 関係機関との連携(日常的なコミュニケーション)
     防災及び保安活動に対するさらなる取り組みのもと、空港を安全な場所として利用いただけるよう、取り組んでいきたい。


  • 奥村(徹) 最後に、各パネリストに最も重要であると思われる点、強調したい点について伺いたい。


  • 市橋 自助、共助の視点も重要。国民保護の仕組みや緊急時の対応について住民の皆様に関心を持っていただきたい。


  • 坂谷 武力攻撃事態が起こる可能性があるという気持ちを持っていただき、「もし、○○が起きたら。」ということを常に考えていただきたい。


  •  人の命を救うことを考え、救命救急センターだけでなく、現場に出向いた治療に努力したい。DMATやドクターヘリの対応も充実させていきたい。


  • 奥村(順) 緊急時に備え、医療施設に関する情報や医薬品などの管理とともに、リスクコミュニケーションについて検討していく必要がある。


  •  皆様の安全を確保することが重要である。その視点に立ち、緊急時に落ち着いて行動できるよう、様々な訓練を実施することにより空港全体の強化を図りたい。


  • 奥村(徹) 可能な範囲で、普段からあらかじめ緊急時における対応をイメージしておくことが重要と思われる。今日の研修会を1つの機会にしていただければと思う。ご清聴ありがとうございました。